トレーニングに取り組む

トレーニングの方法

トレーニング(training)とは、train(訓練する、練習するなど)の名詞形であり、今回は、ヒトの身体的パフォーマンスを速やかに増す目的で行われるものとして考えます。
 
身体的パフォーマンス、すなわち体力(行動体力) のことを表していますが、体力とは、一般的に、人間が生存し活動するために備わった身体的能力の総称で、行動体力とは、外部環境に働きかけて積極的によりよく「生きていく」ために必要な体力のことを言います。

さらに、行動を起こす能力(筋力、パワー)、行動を持続する能力(筋持久力、全身持久力) 、行動を調節する能力(平衡性、敏捷性、巧緻性、柔軟性) の3つに分けることができます。目的別に考えた体力(健康のため、競技力向上のため)、種々のスポーツ種目にあった体力、また年齢区分(子ども、高齢者など)を考慮して必要な体力など色々と考えられるのが特徴です。
 体力を向上するためにトレーニングをやみくもに行っては、効果はあまり期待できません。体力トレーニングを効果的に行っていくにも、次の3つの原理に基づいて行う必要があります。

1.オーバーロードの原理(過負荷の原理)
トレーニングによって体力を高めるためには、トレーニングで用いる3条件(強度?時間?頻度)が、ある一定水準以上のものでなければ十分な成果が期 待できない。例えば、最大筋力を向上させるためには、50回を持ち上げられる重さ(強度)では、増加が難しい。また、持久力向上をねらいとした場合、 週1回の頻度でジョギングを実施しても、呼吸循環器系の改善は見られないなど。
2.可逆性の原理
一度獲得されたトレーニングの効果は、トレーニングの中断によって逆戻りしてしまう。例えば、筋力トレーニングでつくり上げた筋力は、そのトレーニ ングを中止すると次第に元の状態に戻るなど。
3.特異性の原理
トレーニングの効果は、トレーニングに用いた運動の種類や運動の形態によって異なって現れる。例えば、筋力トレーニングによって最大筋力は高まるが呼吸循環系の能力は改善が見られないなど。
 
 これらの原理に基づいて、必要とされる体力要素を向上していくこと、すなわちトレーニング方法を進めていくことが重要です。例えば、筋力を向上させるためには腕立て伏せなどの種目を、スタミナを向上させるためにはジョギング?ウオーキングなどの種目を強度、時間(回数)、頻度を考えながら進めていく必要があります。これらのことを意識しながら、競技力向上や健康維持?増進など目的に沿った形でトレーニングを進めていきましょう。

スポーツ科学部 教授
大学院 スポーツ科学研究科 教授学(指導方法学)

梅林 薫

専門分野:体力科学、運動生理学、コーチング学

トレーニングの3つの原則を意識しながら、競技力向上や健康維持?増進など目的に沿った形でトレーニングを進めていきましょう。